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読書感想(書籍) 限界集落株式会社

元気だせニッポン! 心のカンフル剤――
限界集落株式会社(黒野 伸一)小学館
 2015年1月、NHKのドラマ枠で、5回に渡って放映されました。脚本は櫻井剛、主演・反町隆史です。
 残念ながら、私はテレビは見ていませんが、NHKオンデマンドの番組情報を見る限りでは、原作のストーリーも活かした作りをしているようです。
 最近、本屋さんで目につく書籍は映像化されているものが多く、映像化するから売れるのか、売れるから映像化するのかわからないのですが、映像化作品は、脚本家が原作をどう解釈したか見較べる楽しさがあるように思います。
 オンデマンドで見ようかなぁ、有料だけど…… (^^ゞ

 最初にこの本をみつけたのは新聞広告の中でした。「限界集落」という切羽詰まった言葉と裏腹の明るい表紙絵。それだけで、ストーリーはおよそ想像がついてしまいます。あぁ、コレは村おこしエンターティメントだ。
 想像は、裏切られませんでした。あっと驚くどんでん返しなんかない。だからこそ、気持ちのいい読書になりました。
 
■あらすじ
 金融マン・多岐川優は、勤めていた会社を辞め、祖父が遺した田舎の家を訪ねます。ちょっとしたリフレッシュのつもりでした。BMW7シリーズを駆って走る道は、徐々に細くなり曲がりくねり、ついには車幅いっぱいのジャリ道になる。マクドはない、スタバもない、コンビニだって見当たらない。田畑さえも荒れ放題。いるのはわずかなお年寄り。着いたそこは「限界集落」だったのです。
 一泊したら、すぐに帰ろうと思った優ですが、お節介で暖かい村人に接し、ズルズルと一週間も滞在を続けるうちに、気持ちは変わります。
――この村の人々に、笑顔を取り戻してやりたい。それには村の復興だ!
 
■感想
 ストーリーも素直なら、それを描写する文章も素直。一文一文が短く、形容表現もゴテゴテとしていない。とても読みやすい文章です。冒頭の、村人との接触シーンも、ありがちなシーンとはいえ、読まされます。小さなエピソードのひとつひとつが、効いています。こんなこと、ありそうだよね~、とうなずきながら、手が頁をめくるのです。
 農業や農村に関するウンチク・設定もリアリティがあり、知識欲がくすぐられます。コレは現役医者の書く医療小説や、元金融マンの書く金融小説のような職業小説なのか? という想いが一瞬頭をかすめました。(でも、著者は農業経験者ではないそうです)
 紙幅の関係か、舞台設定や人間関係が丁寧に描かれている割に、主人公・優の提案「農業の集団営農化」が受入れられるまでのプロセスがあっさりしていますが、その分、話の展開はスピーディで、これも読みやすさに貢献していると思います。
 お年寄りや子供との暖かな交流、2組のカップルの恋愛、そして村の再生。物語の柱は盛りだくさん。そして、どれもベクトルは完全に上昇方向。疲れた日、元気をチャージしたいときに効きそうな一冊です。

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