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読書感想(書籍) 図書館戦争

ブッ飛び設定と甘々ロマンス。その影で描かれる、シビアな成長物語――
図書館戦争(有川浩)角川書店
 コミック、アニメ、実写映画と、多彩なメディアで展開されている人気作品です。小説は、シリーズ六分冊という長編にもかかわらず、文庫のみ(=単行本を除く)で累計570万部(※)。実写は、主演・岡田准一、榮倉奈々、監督・佐藤信介で、2015年10月には続編の公開も予定されています。
 でも、この作品、初出は2006年なんですね。もう、9年も前になります。今でも読者を増やし続けているのは、目先の流行に流されない魅力が、作品にしっかり詰まっているからでしょう。
※データ元 ダ・ヴィンチNEWS 2015/06/12(別窓)
 
■あらすじ
 これは、ありえたかもしれないもうひとつの日本。図書の検閲を正当化する「メディア良化法」が成立している世界です。検閲を推し進める「良化特務機関」と、抵抗勢力である「図書防衛隊」による血で血を洗う武装闘争が日常化しています。
 主人公は、本を愛する少女・笠原郁。ある日書店で、特務機関による暴力的検閲に巻き込まれます。そのとき、颯爽と現われ、本と彼女を救ってくれたのは図書防衛隊の「王子様」。郁は、彼を目標として進路をさだめ、鍛え、学び、大学を卒業し、ついに図書防衛隊に入隊します。迎えるのは鬼の上官と個性豊かな仲間達。そしてどこかにいるはずの王子様。郁の成長と型破りラブストーリーの開幕です。
 
■感想
 ベタ甘の王道ラブストーリーです。ただし武闘派。このギャップと勢いが、作品の大きな魅力のひとつになっています。笑いを噛み殺しながら、頁をめくってしまいました。
 でも、笑いや甘さだけではない。主要人物のひとりひとりが、人として成長していく群像劇でもあります。役職的に上は基地司令・稲嶺から下はペーペーの主人公・郁まで、誰もが挫折と成長の姿を読者に晒します。
 人が人とふれあうなかで、自らの弱さを受け入れること、そして相手を受け入れること……それが成長。頭ではわかっていても、なかなか素直にいけない心の機微を、丁寧に、かつ容赦なく描くのです。
 個人的には、エリートな脇役、柴崎や手塚の成長していく姿にツボりました。客観的優秀さやプライドは、武器にもなるが、時に自らを閉じ込める殻にもなる。それを破って踏み出していく彼らが眩しい。
 検閲をめぐる武装闘争の設定については、ややゲームじみているので評価が割れるところだと思います。でも、それを越えて伝わってくるキャラクターたちの熱に、読む側もいつのまにか力づけられる、そんな魅力的な作品でした。

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