読書感想(ネット) Talkative Seawall
詩的空間の中に潜む人間ドラマ――Talkative Seawall(著者:楠園冬樺)
サイト:Ricka(作品頁)(別窓)
■あらすじ
日が暮れた海。通り過ぎるものたちを、静かに見守るものがいる。
「オンライン文化祭2011―夜―」参加作品(別窓)
■キーワード シリアス・現代・ファンタジー
■感想
読み始めてすぐ、静かに語りかける優しい文体が沁みてきました。風景描写も詩的です。擬音が効果的に使われていて、情景だけではなく、音のイメージまでもが脳内に膨らんできます。
舞台は夜の海辺。通り過ぎるものたちを、風景画のように穏やかに描く前半と、胸の内に爆弾を抱えている人間が訪れる後半。抑制された筆で描かれる後半が、圧巻です。
人生には、どうにもならないことがある。押しつぶされそうになったとき、海へ向かう。そして少しだけ荷をおろす。
荷をおろせる場所がある、見守ってくれている存在がある、と慰め励ますような作品でした。
短編です。眠りにつく前のお供に、イチオシです。